【第五章 三節】 貼庫

貼庫
貼庫

修行を支える食と貼庫の務め

厳しい修行生活の中で、一番の救いは食事の時間でした。
一日三食、命を繋ぐ糧を頂けることに感謝し、その幸せを調理する役割が貼庫てっくです。
修行僧たちが起きる頃、静かな調理場へと向かいます。

朝の静寂と粥の深み

粥(朝食)は、文字通り粥と漬物のみ。
一見、簡素で容易に見えますが、米と水の繊細な均衡、そして凍えた体に染み渡る最適な熱さを探し求めるのは、至難の業でした。
基本の中にこそ、食べる者への慈しみが宿るのだと知りました。

活気あふれる昼食と真心の競演

一日の内で最も活気づくのが、昼食の斎座です。
ご飯に一菜一汁。
仲間の貼庫が春巻きやミネストローネといった創意工夫で座を沸かせる中、私はひたむきに野菜炒めやお浸しを供しました。
限られた食材の中で、いかに修行の疲れを癒やすか。
それは料理の腕というよりも、真心の競演であったように思います。

慈しみの薬石と報いの笑顔

晩の薬石は、昼の残りを無駄にせず慈しむ時間です。
余った野菜にとろみをつけた雲片は、僧堂に伝わる伝統の味。
私の作るそれは、あまりに愚直で代わり映えのしないものでしたが、仲間たちはいつも、安らかな、本当に幸せそうな顔で箸を運んでくれました。
その表情こそが、作り手である私にとっての何よりの報いだったのです。

ほろ苦い失敗と青春の記憶

最後に、私の愛おしくも苦い失敗談を。
ある時、心を込めて作った茄子料理が、図らずも全員を東司(トイレ)へ走らせる事態を招きました。
茄子の性質か、はたまた私の腕の至らなさか
今となっては、それも共に苦楽を分かち合った、かけがえのない青春の記憶です。

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恩林寺の小僧さん
檀信徒の皆さんに『一休さん・小僧さん…』様々な愛称で呼ばれております、鳳雅禅士です。「一日一善」を心がけながら、日々精進していきます。感謝・合掌。