【第一章 三節】 追い出し

庭詰中に…

玄関で庭詰をしていると、
「いつまで居るのじゃあ!」「さっさと出ていけ!」と警策で叩かれます。
私たちは驚きましたが叩かれるのも嫌なので逃げていきます。

全力疾走とはこの事で、草鞋で走るため私の足の指からは血が流れました。
どこへ逃げても警策を持った先輩は追い回してきます。
仕方なく三門まで走りました。
すると途中で追うのをやめ、戻っていきました。

これは本当に僧堂に入りたい意志があるか試されているのです。
たとえ追い出しても、入りたいと自ら庭詰をしている場所まで戻ってくるかを見ているのです。
意志がない者には真似出来ないからです。
私たちもこの後、庭詰の場所に戻り懇願し続けました。

日記には…

私は庭詰中に毎晩、日記を書いていました。
見返してみると当時の自分は精神的にとことん追い込まれていた様で、こう記しています。

朝の四時起床が辛い。布団の畳み方で怒られた。
日天作務(朝の掃除のこと)が薄手で寒い。
腰が痛い。足も出血、嫌だ。

懇願してまだ二日目…それだけの時間で、こんな有り様でした。
しかし私には他に二人の仲間がいましたので、気持ちは他の方達と比べてマシだったのかもしれません。

もし一人だったら追い出される時、家に帰っていたかもしれません。
今までの生活が有り難く感じました。

次の修行は…

さて明日から三日間は旦過詰というものが始まります。
壁に向かって座禅し続けるのです。
コロナ禍ということで、本来は旦過寮という狭い部屋で行うのですが、廊下に並んで行うことになりました。
さて私たち三人はどうなるのでしょうか。
不安を覚えながら私たち三人は二畳の旦過寮で眠りにつきました。

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恩林寺の小僧さん
檀信徒の皆さんに『一休さん・小僧さん…』様々な愛称で呼ばれております、鳳雅禅士です。「一日一善」を心がけながら、日々精進していきます。感謝・合掌。