別れは必ず来る
シニアと呼ばれる年になると同年の知人から、親の訃報を聞く機会が増えます。
普段意識していなかった自分の親の死も次第にリアルに感じられます。突然の死にせよ、長い介護の期間を経た末の往生にせよ親の死ほどショッキングなものはないでしょう。時には疎ましいと思った親であっても自分を生み育ててくれた唯一、無二の存在です亡くなった直後は葬儀や手続きやらで慌ただしく過ぎ去りますが時がたち、落ち着いて仏壇やお墓の前で手を合わすとき、改めて失ったものの大きさに気ずかされるものです。
しばらくの間呆然自失の状態になる人もあります。いつかは別れの時がやってくる。それは解り切った事ですが、いざ、その時が来ると向き合うことができない。それが人の常でしょう。
仏陀の根本思想は「諸行無常」です。
この世の中はまどろみの中で見る夢のようなもので、いつまでも続くものではありません。自分の思いに関係なく夢はいつかは覚め、終わりがやってきます。夢の中で出会った人はもう、二度と会うことはできません。たとえ親子の間のような強い絆で結ばれた間柄でもその存在は夢の中で出会った人のようにはかないもの。人の命は突然醒めてしまう夢のように頼りないものです。だからこそ命はかけがえのないもの、いつ絶えるともしれない儚い存在同士、長い間一緒に居られたことが奇跡ではなかったか。嘆き悲しんでも、亡くなった人が帰ってくることはありません。
つかの間の夢の中で一緒に生きてこられたことを幸せに感じ、これからの人生を大切に生きたいものです。
住職合掌