四門出遊 (生老病死)
あるときゴーダマシッダルタ王子は城の外に出たいと思い、父王の許しを得て東の門から出られた。
そして馬車に乗って園林に向う途中、頭は白く歯は抜け落ち、痩せ衰えて腰の曲がった男を見られました。 王子はびっくりして控の者に「ああ、どうしてこの人は、こんな姿をしているのか?」と、聞かれました。
「王子様、これは老人というものです。」
「どうして老人といわれるのか?」
「人は、年をとると皆、このようになり、余命いくばくもなくなります」
「私もそうなるのか? 其れはまぬがれることができないのか?」
「王子様、生きている者は皆老います。これはどんな偉い人でも免れることはできません。」
王子はこれを聞いてすっかり気が沈み、行楽の気分は消え失せてしまいました。
またある日、二度目の外出をすることになり、今度は南の門から出られました。すると途中で、身はやせ細り、顔は黒ずんだ一人の病人が、自分の汚物でまみれて苦しんでいました。
控の者は、 「これは病人という者で人は誰でもかならず病気になります。」 といわれ、王子は楽しもうという気持ちは消え失せてしまいました。
三度目は西門から出ることなり、途中で死んだ人を嘆きかなしむ人たちを見かけられました。
「これは何というものか?」
「これは死人というものです。」
「死とはどういうものか?」
「死とは命が尽きることです。二度と親、兄弟を見ることができなくなります。」
「私もそうなるのか?」
「そのとおりです。生あれば必ず死があります。其れは誰ひとりのがれることはできません。」
太子は悄然として馬車を城内に引き返させた。
またある日、四度目の外出のとき、北の門から出て歩いているとある人が衣を身にまとい鉢を手にして歩いているのをご覧になり、 「あれは誰か?」と、太子が聞かれると、
「彼は、出家した僧です。僧とは人間の欲と情愛をすべて断ち切った人で、何事にもまどわされず、飢えることも、楽しむこともない境地にある人です。」
これを聞いた太子はきっと、此処に救いの道があ るものと確信しました。 これがお釈迦様が出家を志すきっかけとなったのです。
四門とは東方 発心門・南方 修行門・西方 菩提門・北方 涅槃門といい、佛葬では四門を行道する。
住職合掌