ある日の夕暮れ、坐禅しておられますと、にわかに金色の蓮の花から何ともいえない香りが漂って来て弥陀庵いっぱいにあふれ、禅師の身も心も晴れ晴れとし身体じゅうから白い汗が雨のように噴き出してきました。
禅師が、これは決して仏の境涯ではない、悪魔のしわざだと覚られますと、今までの金色の蓮の花はさっと消えてしまい、香りもうせてしまいました。
このような不思議な光景は、心にそう想うからそのような幻が生れる、心の妄想に過ぎぬのだと知られました。
開元寺では崇禎八年、鼓山の永覚和尚を住持としてお迎えしました。
禅師は、さっそく、永覚和尚と禅の問答をされましたが、胸のなかの疑問の塊は大きくなるばかりで、坐禅していても、夜中にふと目が冴えて来て、不安になって落着きませんでした。
このもやもやを解決しようと、二十六歳の秋、行脚(修行の旅) に出られました。
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