頭陀袋120 令和4年6月号

かんのんさま(続)

何年ぶりかで清峯寺へお参りさせていただきました。私たちの若いころはこの寺は鶴巣の尼寺と言われていました。

現在は無住ではありますが部落の方たち七十戸余りで隣接する白山社とともに大切にお守りされており、今もなお綺麗に保っておられます。
境内の円空堂にお祀りされている円空仏三体は昭和三十年代にドイツの博覧会に出展されたことにより円空上人の傑作として有名になりました。しかし、この寺のご本尊、十一面千手観音様はあまり知られていません。

このかんのんさまこそ円空上人がその造仏のモデルとして拝した御像なのです。どっしりした風格、鎌倉の技術を伝える慈悲深いお姿、何にもまして大きな両手を合わすこの合掌に仏の願いが込められております。
こちらのご本尊は融合した稀有なお姿ですが十一面観音と千手観音はそれぞれの姿でお祀りされているのが一般的です。
十一面観音というのは多くの方向を見て満遍なく救ってくださる菩薩で、東西南北とその中間の方位で八方位と天地上下で十の顔、そしてもう一つの顔は皆さんの心を見ているそうです。
そして千手観音というのは文字通り千本もある手で差別なく多くの人を数多の手立てで救ってくださいます。



寺院を建立した泰澄大師は十一面観音を深く信仰されていたこともあり、このような形が出来上がったのではないかと思われます。


円空上人は自分の歓喜の思いを自ら彫り上げた十一面千手観音の足元に自刻像を彫り、さらに右に聖観音像。左に善女龍王を配し三尊仏として完成させました。聖観音は恩林寺のご本尊と同じ。本来の姿の観音さまで、変化の観音と区別して聖の字を冠する。
善女龍王は、その昔弘法大師が雨乞いをした時に雨を降らせた仏さまとして有名です。


円空上人は、元禄の終わり頃、千光寺滞在の後にこの寺に立ち寄ったのですが、当時はこの寺は鶴巣寺谷に在って、度重なる、ご本尊の不運にも心を痛めたものと思われます。
その後、安政年間に曹洞宗へと改宗し現在地に堂宇を移したことが知られています。
このお寺の来歴は古く、国府町桐谷より古川町太江にまたがる安峰山(吉城高校校舎より奥にある山)山頂付近にあった山岳寺院(天台宗)で平安時代創建といわれ、当初は聖観世音菩薩がご本尊でしたが盗難にあい、戦渦にあい、移転を重ねて現代まで守り伝えられたのです。


その他にも清峯寺には、両手で薬壺を持つ薬師如来像(通例、右手に施無畏印を結び、左手に 薬壺)や仏法ならびに伽藍を守護する荒神である三宝荒神像、黄檗宗大本山萬福寺にもお祀りされている韋駄天像など多くの仏像が残っています。
円空を辿って訪れてみるのもよいのではないでしょうか?

今月の言葉

行解相応(自分でできることをやり続ける)

寺報、頭陀袋は本号で120号を迎えました。
月一回の月例行事、無壇の寺の住職の暇つぶしのようですが、それでも周りの人たちの励ましを得て休まず十年が経ちました。
時とともに得るものの大きさに感動、感謝。
鳳雅禅士のパソコン技術に頼りながら、もう少し頑張ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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古田住職
皆さん、こんにちは。住職の古田正彦といいます。 私は「お寺に行こう 和尚さんと友達になろう」をキャッチフレーズに進めています。 小さなきっかけでも仏様と結ばれることを喜びとしています。