頭陀袋051 平成28年9月号

日日是好日(にちにち、これ、こうにち)

禅を修行した人の理想の言葉として「日日是好日」という有名な言葉があります。

「来る日も、来る日も結構な良い日である」という言葉です。

よくお茶の席にかけてある掛け軸などで見かけます。

これは禅の古典 (碧巌録) 第六則「雲門日日是日」にあります。

雲門とは中国、唐の時代から五代にかけて活躍した雲門禅師の事です。
雲門は歴史に残る大禅師で、その思想は雲門宗といわれるほど栄えました。
これは短い言葉で禅の本質をあらわしているといえます。

十五日以前は汝に問わず。十五日以後、一句を言い持ち来たれ。
自ら代わって曰く、日日是好日。

本文にある十五日とは説法を行った日。今日までのことはみんなに問わない。これから先、お前たちはどんな毎日を送るのか?一言で言ってみよ。(誰も答えるものがいないので雲門は日日是好日。来る日も来る日もまことに結構な良い日である。)

さて、これでは、私たちには、何のことやらわかりません。幸い、碧巌録にはたくさんの提唱緑 (講義録) がありますので、それらをもとに解説しますとまず、「一を去却し、(一を捨てて、の一は自分の欲にとらわれて悩み苦しむ小さな自分の事です。)七を抽得す。(七を取る)千差万別の世界の事。自分にこだわってばかりいる小我(自分の利益)ばかり考えていると視野が狭くなってしまい、行き詰まってしまいます。小我を捨てて無心になればおのずと広い世間がえてくるというものです。

最近、日本を代 表する名門企業でも次々、不正な事件生しています。原因は様々ですがその根底には経営者や経営のトップが当面の利益ばかりにとらわれて視野が狭くなっているという心理的要因があるように思います。短期的には不正をすることにより課題を乗り越えることができても、どこかに無理が発生して、いずれ不正が発覚してしまいます。そして不正により、得た利益の何倍何十倍の損失を出すことになり企業の存亡にかかわる大事件に発展します。これらは程度の差こそあれ、わたしたちの人生にはありがちなことです。小手先のごまかし、といえばだれもが経験したことがあるのではないでしょうか。

それを防ぐ手段というのは「自分だけ儲かれば、自分の会社だけ儲かれば」という小我を捨てて「自分のやっていることは社会のためになっているのか?」と長期的多面的視野に立って考える必要があります。

江戸時代に活躍した近江商人は三方よし。と言って (売り手よし)(買い手よし)(世間よし) このような姿勢を保つためには自分へのこだわりを捨てることだよ。 と禅の教えを説いています。しかし、自分の利益を全く考え無いなどとは、今の時代むりな話です。俺が、俺がの、その気持ちを少し押さえて「三方よし」を日常生活 の中に取り入れて雲門禅師の日日是好日 (毎日が幸せいっぱい)の、理想の境地にすこしでも近づきたいものです。

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古田住職
皆さん、こんにちは。住職の古田正彦といいます。 私は「お寺に行こう 和尚さんと友達になろう」をキャッチフレーズに進めています。 小さなきっかけでも仏様と結ばれることを喜びとしています。