言葉選びが苦手な恩林寺の小僧です。
僕がまだ僧堂にいた頃、僧堂の師が話していた言葉があります。
それは「不立文字 教外別伝 直指人心 見性成仏」という言葉です。
禅宗の僧侶は誰もが知っている4つの四字熟語で、今回は前半の「不立文字 教外別伝」について話そうと思います。
不立文字
言葉だけでは成立しない、言葉の概念に囚われてはいけない。
このような意味が「不立文字」にあります。
例えば、毎日お経を読むとします。
しかし、それだけでは仏道を歩むことは出来ません。
善い行いをしなければ、お経で読んだことを実践しなければ、意味がないのです。
言葉だけでは説明しきれない…文字に頼って知識を深めるのではなく、実践して智慧を深めていきたいものです。
教外別伝
教えの外にも伝えたいことがある、一面だけを見るのは良くない。
このような意味が「教外別伝」にあります。
よく、これはこうなんだ!と頭が固い人がいます。
確かにその通りですし、それが正しいと思います。
しかし、臨機応変に姿を変えないと良くないこともあるのです。
実際、お釈迦さまは「対機説法」といい、相談しにきた人々に対し、各々に合った話で説法をしたそうです。
嘘も方便と言われるほど、時には必要な行いがあるのではないでしょうか?
また、その教えばかりに拘ってはいけないと思います。
私が知っているお経にはこう書いてあったから…。
お経はお釈迦さまの話を後世の僧侶たちがまとめたものです。
一つのお経ばかりみるのではなく、多くの観点から見てみると智慧が深まると僕は思っています。
知識・知恵・智慧
よく、お寺では『智慧』を大切にしなさい。と言われます。
生活していますと『知』に関する言葉に囲まれていることに気づくと思います。
しかし、その違いを…と言われると、少しゴニョゴニョ…😅
知識
知識は、その人が学んだものを意味します。
学校で数字を習ったり、日本語を書けるようになったり。
家で歯磨きできるようになったことも、知識に含まれます。
その人が生きていく上で覚えたことが、知識にあたるのです。
学生時代に「頭いいな~」と言われるのは、この知識量の豊富さや記憶能力の高さでしょう。
知恵
俗世間の認識・判断・対応・アイデアなどの心の働きを意味しています。
極端な言い方をすれば『損得勘定での判断』ともいえますね。
様々な知識の基づき心が動いている姿で、『悪知恵』などとなったりしますね。
かつて世間を賑わしたオウム真理教事件。
その犯行を犯した人々が、高学歴なのをご存知でしょうか?
どんな知識も、知恵に拠る判断次第ということでしょう。
智慧
先程の知恵と智慧はどちらもちえと読み「知的な頭の働き」を意味している共通点があります。
それに対して知恵は一般的に使われる機会も多いのに、智慧は反対に見聞きする機会は少ないかもしれません。
どう異なるかというと…目先の事柄などではなく、もっと深いイメージで捉えようとする心の働きと考えればわかりやすいかもしれません。
智慧というのは仏教用語で『真実の姿・真理を明らかにする・悟りへの心の働き』という意味があります。
六波羅蜜の六番目に智慧と出てきます。
不立文字 教外別伝。
文字では表しきれない程の大切な教えを、私たち自身の体で実践していきたいですね。
世の中には難しい言葉が沢山あります。
小僧にとって、「敬語」は何より難しい言葉です。
尊敬語?謙譲語?どのような場面でどのような人にどのような言葉で…。
頭がパンクしてしまいそうです!
しかし、言葉だけ正しくても、威張るような態度では誠心誠意を感じられません。
僕は言葉遣いが苦手な分、態度や心を改めていきたいと思います。
※次回は続き、「直指人心 見性成仏」について書こうと思います。ぜひお楽しみに!
小僧合掌
大乗仏教での実践徳目(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)です。
詳細はまた後日、掲載していきたいと思います。
これらの実践行は簡単に身につくことはありません。
故に僧達はそんな存在になれるように日々修行に取り組んでいるのです。