急を聞いて馳けつけられた悦山和尚が、
「どうかいま少し長くこの世に生きながらえて下さいますように」と申し上げられますと、
禅師は、
「お釈迦さまでさえ、いつまでもこの世に生きながらえてはおられなかった。私にどうしてそうしたことができようか」
とかえって慰められました。辞世の句をお願いされますと、禅師は、

木庵禅師
すべてのものは空であり、すべてのものにはいつまでも変らないという姿形はない。
これが私の世を去るに当っての一句である
と言われ、しばらく側の者たちを眺めておられましたが、静かに目を閉じ、柔らぐようにお亡くなりになりました。
時に天和四年一月二十日午前二時でした。生年七十四歳、僧となられてから五十七年でした。
ご遺骸は黄檗山内萬寿院の塔所にお祀りされました。

木庵禅師
木庵禅師物語、これにて終了です。
ご愛読感謝申し上げます。
出典:黄檗二祖 木庵禅師物語
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