お寺の鐘
夕焼け小焼けで 日が暮れて 山のお寺の鐘が鳴る
お手々つないで みな帰ろ からすと一緒に帰りましょ♪
まだ学校に入る前の子供の頃に覚えた唱歌。
昔は高山でも明け六つ、暮れ六つ、というように時を告げる鐘が鳴りました。
近年はお寺の鐘もあまり聞かれなくなりました。
私どものお寺では終戦の日、防災の日、毎月一日、十五日は朝六時に鐘を突きます。
これは祝聖と言って、日本の国が平和でありますように、世界の中で争いが起きませんように、と祈りの鐘であります。
祝聖の翌日、近所のご夫婦がお寺にお詣り下さり、「お寺で鐘を突かれるのには、どんな意味があるのですか?」
咄嗟の問いに「はい。お寺の鐘は、そのお寺のご本尊様の声とでも申しますか呼びかけ、願い事が音として響きわたるものです。私はそのように受け止めております。」と申しました。
ゆく年の最後、除夜の鐘が鳴ります。
百八の煩悩を洗い流して新しい年を迎える。
くる年はご本尊様の呼びかけに答えられる年となりますでしょうか。
感謝の心が響くでしょうか。
表紙解説
先日、神岡町の瑞岸寺様にお詣りに行きました。
本堂前の大きな釣り鐘。まさに山のお寺の鐘です。
和尚の昭和、下岡本を語る
私の親父は、一見おとなしそうで社交家とは言えませんでしたが、子供を叱る時は軍隊生活が長かった為か手が早かったように思います。
囲炉裏を囲んで家族で食事をするのですが、ご飯がこぼれてポロリ灰の中に落ちますと、右手で拾う前に「ビシリ。」
火箸が右手にあたる。
「なにをしとる。米というものは八十八手をかけてできたものや。お百姓さんの苦労の塊やぞ。粗末にするとは罰当たりな。」
何度も何度も聞いております。
わしも百姓の倅、苦労はよくわかります。
田起こし、畦ぬり、手で田植え。田の草とり、そのころ畔に豆を植える。
消毒、畔草刈り。稲刈り、稲架掛け、足踏みの脱穀機でギイコン。ギイコン。
叺に入れた籾を精米所に運ぶ。
百姓仕事が終わると秋餅を搗く。
ぼたもちのようにどっさりあんこをつける。
この秋餅のうまいこと。
それぞれの家で秋餅を搗くと近所に配る。
隣の田中さんの餅はウマかった。
重箱に付いたあんこまでこそいで食べた。
こんなわけで村の人たちはみんな仲良し。
気心知れた仲間でした。
住職合掌