【最終章 二節】 本山知客

【最終章 二節】 本山知客
【最終章 二節】 本山知客

厳父のごとき師の影と、その奥に溢れる深き慈悲

緊迫の朝課と忍び寄る足音

早朝の萬福寺には、遠くから近づく足音が響きます。
それは雲水たちの慌ただしい雪駄の音ではなく、静かで気配を感じさせない足音…。
大雄本殿に入堂される時、そのお姿が明らかになります。宮崎本山知客の登場です。
朝課で誰かが間違えようものなら、磬子の棒を飛ばしたり、深い溜息を吐かれたり…。
私たち雲水の間では、本山で一番恐れられている和尚さまでした。
坐禅の際は必ず端に座り、私たちをじっと見回されます。
また、休憩中にもそっと現れては、私たちが気を緩めていないかを確認されていました。

厳しい素顔の裏に秘められた温もり

しかし、その厳しいお姿の裏には、温かい一面もありました。
誰もいない隙を狙って禅堂に差し入れを置いてくださったり、作務や法要の作法を丁寧に教えてくださったり。
時が経ち、僧堂を離れてお話を伺う機会をいただいた際、和尚さまはこのようなお話をしてくださいました。

本山知客

私が嫌われ役や怖い存在になれば、皆が一致団結して頑張ろうと思えるでしょう。
厳しく指導された経験は、いずれ必ず役に立ちます。
今の萬福寺の和尚方は雲水に甘すぎるのです。
私も君たちの姿を見れば愛おしく、甘やかしたくなる気持ちはよく分かりますが、全員で甘やかしてはいけません。
だからこそ、心を鬼にして接しているのですよ。

受け継がれる愛と感謝の想い

その本当の温かさに触れた時、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになりました。
怖くも優しかった宮崎和尚には、今でも深く感謝しております。
最近お会いした際も、現役の雲水さんたちに強い口調で指示を出されていました。
その厳しさは今も健在でしたが、去りゆくその後ろ姿には、雲水たちへの深い愛が確かに溢れていました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
恩林寺の小僧さん
檀信徒の皆さんに『一休さん・小僧さん…』様々な愛称で呼ばれております、鳳雅禅士です。「一日一善」を心がけながら、日々精進していきます。感謝・合掌。