托鉢の帰路、重責の始まり
鈴の音とともに托鉢から帰山し、掌に重みを感じるお布施を観音様へ捧げます。
僧堂の総務である侍者の務めは、計算や細かな差配が苦手な私にとって、修行のなかで最も高い壁でした。
自身の未熟との静かな闘い
同夏の悪戯な数字に惑わされ、大切な領収書を失くしては項垂れる日々。
自分は失格ではないかと、情けなさに胸を痛めることもありました。
坐禅の線香、作務の道具、そして一息つくための茶菓子。
皆の修行を支える僧堂の母として、私の時計はいつも他より十分早く進みます。
支える者の矜持と重圧
厳しい坐禅を少しだけ早抜けできる特権に安堵する一方で、準備不足は許されないという重責に背筋を正す毎日。
雲水たちが迷いなく修行に没頭できる環境を整えること。
それは、己の不手際と向き合い、確認を繰り返す静かな闘いでもありました。
遺された一筋の光
そんな不器用な私に、たったひとつだけ贈られた光がありました。
それは、心を込めて認める字の美しさ。
僧堂での私の筆跡は、今も後輩たちの足元を照らす道標として、大切に使い継がれていると聞きました。
過去の自分への報い
未熟だったあの頃の私が、確かに誰かの役に立っていた。
その報せは、過去の自分を優しく包み込むように、今も私の心を温かく震わせています。













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