【第五章 二節】 殿司

殿司
殿司

殿司 法要の準備や諸堂の管理

目覚めと、お寺に吹き込まれる命

早朝、静寂を破る巡照板の音が、雲水たちの眠りを解きます。
その直後、暗闇に包まれていた本堂や回廊に、ぽっと温かな灯りが灯ります。
それは、殿司でんすの手によって、お寺に命が吹き込まれる瞬間です。

妥協なき清掃と法要の設え

そして太鼓の音が響く中、本堂の掃除を始めます。
本尊や経机の埃を丁寧に払い、冷たい石畳を一点の曇りもなく拭き上げ、経本を整然と並べる。
座布団の向き、するとふさのひとすじに至るまで、指先で美しく整えていきます。
朝課10分前。静かに蝋燭へ火を灯し、線香を立てる。
法要の準備や諸堂の管理が殿司の役割なのです。

絶え間ない「気づき」の連続

法要の準備から諸堂の管理まで、すべてを司る殿司の仕事は、一見すると朝晩だけのものに見えるかもしれません。
しかし、その実は、絶え間ない気づきの連続です。
蝋燭は短くなっていないか?
線香は足りているか?
回廊に塵ひとつ落ちていないか?
供えられたビシャの葉に、枯れはないか?
一つでも見落としがあれば、お参りされる方の心を曇らせてしまう…。
その一心で、殿司は一日中、広大な境内を巡り続けます。

万物に命を宿す循環の精神

役目を終えようとする短い蝋燭も、決して捨てることはありません。
禅堂へと持ち帰り、坐禅を組む修行僧の元で再び命を宿します。
燃え残った線香は御香へと姿を変え、枯れたビシャは山へと返し、次なる命を育む肥沃な土へと還していく。
何ひとつ、無駄なものなどない…その精神が、お寺の隅々にまで浸透しています。

聖域を支える、日々の愚直な精進

一日の終わり、諸堂の戸締まりと消灯を確認し、殿司の長い一日は静かに幕を閉じます。
目立たぬ場所での、日々の愚直なまでの確認と精進。
その積み重ねこそが、訪れる人の心を洗う、清らかな聖域を支えているのです。

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恩林寺の小僧さん
檀信徒の皆さんに『一休さん・小僧さん…』様々な愛称で呼ばれております、鳳雅禅士です。「一日一善」を心がけながら、日々精進していきます。感謝・合掌。