開山堂の裏
朝の静寂を切り裂くように、知客和尚が駆けてきた。
「開山堂の裏を修理してほしい」
その言葉に導かれるように向かうと、そこには崩れた階段と泥に埋もれた排水溝が広がっていた。
まるで長年の苦しみが形を持って訴えかけているかのよう。
私たちはすぐに作業に取りかかった。
草を刈り、泥を掻き出す。
重く固まった土砂に手を焼きながらも、一歩ずつ進めていく。
だが、その下から現れたのは、ひび割れた古いU字溝。
水を流すには傾斜を整えなければならない。
水平器を借り、慎重に溝を掘る。
時に失敗し、仲間に叱られながらも、皆で力を合わせ、ようやく水が流れる美しい道が完成した。
その瞬間、心の奥深くに温かい達成感が広がった。
ようやく作務を終え、安堵したのも束の間、和尚の次なる言葉が響いた。
大きい灯篭
「その大きい灯篭を移してほしい」
疲れ果てた身体に鞭を打ち、私たちは再び力を合わせた。
重い灯籠、一人では動かせないはずのものが、皆の手によって少しずつ動き始める。
汗が流れ、息が切れる。
それでも、最後の一押しで灯篭が新たな場所へと落ち着いた瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
それは、苦労の末に手にした真の喜びだった。
その日の薬石は、格別の美味しさだった。
そして、和尚からの差し入れのお菓子が、頑張った心を静かに癒してくれた。
仲間とともに積み重ねた努力と達成の余韻が、静かな夜に優しく溶けていった。
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