【第四章 四節】 排水溝

【第四章 四節】排水溝
【第四章 四節】排水溝

開山堂の裏

朝の静寂を切り裂くように、知客和尚が駆けてきた。
「開山堂の裏を修理してほしい」
その言葉に導かれるように向かうと、そこには崩れた階段と泥に埋もれた排水溝が広がっていた。
まるで長年の苦しみが形を持って訴えかけているかのよう。
私たちはすぐに作業に取りかかった。
草を刈り、泥を掻き出す。
重く固まった土砂に手を焼きながらも、一歩ずつ進めていく。
だが、その下から現れたのは、ひび割れた古いU字溝。
水を流すには傾斜を整えなければならない。
水平器を借り、慎重に溝を掘る。
時に失敗し、仲間に叱られながらも、皆で力を合わせ、ようやく水が流れる美しい道が完成した。
その瞬間、心の奥深くに温かい達成感が広がった。
ようやく作務を終え、安堵したのも束の間、和尚の次なる言葉が響いた。

大きい灯篭

「その大きい灯篭を移してほしい」
疲れ果てた身体に鞭を打ち、私たちは再び力を合わせた。
重い灯籠、一人では動かせないはずのものが、皆の手によって少しずつ動き始める。
汗が流れ、息が切れる。
それでも、最後の一押しで灯篭が新たな場所へと落ち着いた瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
それは、苦労の末に手にした真の喜びだった。
その日の薬石は、格別の美味しさだった。
そして、和尚からの差し入れのお菓子が、頑張った心を静かに癒してくれた。
仲間とともに積み重ねた努力と達成の余韻が、静かな夜に優しく溶けていった。

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恩林寺の小僧さん
檀信徒の皆さんに『一休さん・小僧さん…』様々な愛称で呼ばれております、鳳雅禅士です。「一日一善」を心がけながら、日々精進していきます。感謝・合掌。