頭陀袋036 平成27年6月号

お母さんとの別れ

お坊さんという立場から、私たちはいろいろなお別れの場面に立ち会わせていただいております。

実は最近、市内のお寺様の檀家さんのお葬式にお参りさせていただきました。

お通夜が終わって喪主の方のご挨拶がありましたが、大変、丁寧なおことばがあり、故人を思う気持ちが言葉となってあらわされ、故人が平生、皆さんに慕われていたのだなあ。と、感銘致しました。寺に帰りまして香典返しについておりました会葬御礼のはがきにはこんなことが綴ってありました

「愛情に包まれた幸せな日々ありがとう」

新聞用のポケットの付いた椅子カバーや、柔らかなコタツの上掛け。我が家のそこかしこに残されているのは、母手つくりの手芸品。そっと手にとればぬくもりとともに 愛情が伝わってくるような気がいたします。

いつもちくちくと縫い物に励み暮らしの彩りを添えていた母。おおらかで広い懐や明るい笑顔は皆の心のよりどころでした。私たち子供は、母に厳しくしかられた記憶はなく孫たちにとってもやさしいおばあちゃん。

一年ほど前に病がわかってからでしょうか、子、孫、家族そろって温泉旅行に出かけました。名湯に癒され美しい景色に 目を細めそしてたくさんの笑顔に囲まれて …。あの時のしあわせそうな母の表情を生涯忘れることはありません。入院中も、幼い孫の名前を呼び、最後まで 「家族を気遣ってばかりでした。そっとあたたかな手を添え今日まで皆を守ってくれた母に、今、心から「ありがとう。」を、伝えます

子供一同

妻○○ゆみ子は平成二十七年三月二十八日 満六十五歳にて真心を尽くした生涯の幕を下ろしました。頬笑みの花咲く人生を共に 歩んでくださった皆様へ、賜りましたご厚情に深く感謝申し上げます。本日の会葬まことにありがとうございました。

喪主○○○○

外親戚一同

会葬御礼の葉書には、会葬御礼というタイトルは無く、思いを込めて、となっておりました。
故人の娘さんがしたためられたものでしょう。

また、喪主である旦那さんのひとこと。短く意をつくしています。日頃のお母さんの姿が目に浮かぶようです。最近の六十五歳はまだまだ早死です。短い生涯を力いっぱい生き抜かれたことでしょう。ご家族の悲しみはいかばかりかと思いました。大切な人をお送りする一つの形として、心に残ったお話を紹介いたしました。

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古田住職
皆さん、こんにちは。住職の古田正彦といいます。 私は「お寺に行こう 和尚さんと友達になろう」をキャッチフレーズに進めています。 小さなきっかけでも仏様と結ばれることを喜びとしています。