頭陀袋032 平成27年2月号

それぞれの人生

先日、スクラップブックを整理しておりましたら分子生物学者でノーベル賞を受賞された利根川進先生が、日本経済新聞の私の履歴書という欄に投稿されているのを見つけました。
毎日いろいろな話題が出てきて、最後の二十九話目に私の家族というタイトルでした。
私には大変心に残るはなしでしたのでここに紹介します。

私の履歴書(29) 私の家族

利根川進 家族について少し紹介しましょう。

妻の真由美とは 1985 年に結婚しました。 彼女は当時NHKで教育番組や特集などを担当するデレクターでした「21 世紀は警告する」という、特集番組を作るために私にインタビューを申し込んできて知り合いました。私たち夫婦は長男の秀(ひで)長女の英(はな)二男の知(さと)の二男一女に恵まれました三人ともボストンで生まれ育ったアメリカ人です。

子育てに関してはいろいろな機会をできるだけ与えようと心掛けました。三人ともとても心優しい人間に育ったと思います。

秀はマサチューセッツ工科大学を卒業して日本のIT関係の企業に就職し、東京で一年足らず働いたのち、その会社が買収したサンフランシスコにあるアメリカの会社で働いています。

英はニューヨークの伝統あるスキドモア大学を卒業したのち日本政府が行っているJET (英語が母国語の若い大学卒業生を日本に招 いて中学高校で英会話の授業を補佐する)プログラムで埼玉県の高校で一年間働いたのち この秋からパートタイムでマスコミの仕事をしています。

知はずば抜けて才能に恵まれたミステリアスなところのある子どもでした。何をやってもすんなり素晴らしくよくできてしまう。物理、数学、歴史をはじめとする学業一切はもちろんチェロとピアノを演奏しましたが、ピアノのコンペテイションで勝ってカーネギーホールで演奏するほど音楽の才能 にも恵まれていました。いつみてもクールで余裕がある。これほどすごい才能を持った子供は、将来どうなるのだろうと、本当に楽しみにしていました。知は小さいころからサイエンテイストになると決めていて三人の子供の中で唯一、私の知っている世界を目指していました。夏休みにMITの生物物理研究室で働いてみたいというので彼が教授との面接に行ったのです。後で何を質問されたのか尋ねてみると「何を目的にこの研究室で働きたいのか」と聞かれたと。そ れに対して「エデュケーションインスピレー ション&フアン」と答えたというのです。まったく十七歳とは思えないような答えです。 もちろん研究室にうけいれてもらいかなり真剣に研究したようで後に、「セル」という科学誌の論文に共著者として名前が載ることになっているそうです。(一高校生がここまでできるとは信じがたい)と、教授から言われました。

科学を志していた知は残念ながらMIT1年生の時、誰にも告げずに十八歳で夭逝してしまいました。 親にとってこれ以上の残酷はありません。 私も残された人生はそれほど長くはありませんが、最後まで十字架を背負って生きていかなくてはなりません。実は私はあまりにもつぎから次へと幸運に恵まれてきましたので以前から時々、[大丈夫かな」という気がしていました。

私は宗教を持たない人間ですが、やはり天は禍福を調整したのではないかと。もしそうならノーベル賞、その他の幸運はいらないから知を返してほしいと心から思います。深い悲しみにくれる日々ですが、本当に短い間ではありましたがあれほど魅力的な若者と過ごせたことを感謝しなくてはならないのかと思うこともあります。 おわり

*人は幸せそうに見えてもそれぞれに深い憂い、かなしみをもっているものです。

他人の幸せをうらやむより、まず、自分自身の幸せに感謝しなければなりません。

お彼岸

お彼岸は、春と秋の二回あり、春分、秋分の日を中日とし、前後三日を合わせた七日間を言います。

ご先祖様や自然に感謝をささげる仏道精進の期間で、日本独自の仏教行事です。

お彼岸にはお寺の法要やお墓詣りに行き亡き人に思いをはせ、感謝の誠を捧げます。

お仏壇の掃除はもちろんのこと仏具などもきれいに磨き、季節の新しい花をお供えします。

お彼岸には、おはぎ、団子、御霊供膳、お菓 子、果物などをお供えいたします。

涅槃忌

釈尊が、沙羅双樹の下で入滅された日にちなむ法要です。涅槃図は沙羅双樹のもとに横臥した釈尊のまわりを弟子や動物たちが取り囲んで悲しむ図 で、中でも京都、こう東福寺の明兆作大涅槃図が最も有名です。釈尊の入滅された日は実際には定かではありませんが「大般涅槃経」の記述には二月十五日とされております。 高山では、新暦、三月十五日、あるいは春の彼岸会と同時に、涅槃忌を行われるお寺が多いです。

東山の禅宗寺院の本堂や、恩林寺ではお彼岸中、涅槃像がかけられております。また、涅槃像といっても厨子に納められている、立体的な像を拝したことがありますか?

城山の曹洞宗大隆寺には高山には例のない立派な涅槃像があります。和尚さんにお願いしてぜひお参りしてください。

涅槃忌や皺手合する数珠の音  芭蕉

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
古田住職
皆さん、こんにちは。住職の古田正彦といいます。 私は「お寺に行こう 和尚さんと友達になろう」をキャッチフレーズに進めています。 小さなきっかけでも仏様と結ばれることを喜びとしています。