四つの誓い
衆生無辺誓願度(しゅじょうむへんせいがんど)すべての人たちが救われますように、
煩悩無尽誓願断(ぼんのうむじんせいがんだん)尽きない煩悩を断ち切れますように
法門無量誓願学(ほうもんむりょうせいがんがく)たくさんの仏の教えを学べますように
仏道無上誓願成(ぶつどうむじょうせいがんじょう) この上ない仏道を成就できますように。
さてここに掲げましたのは四弘誓願文(しぐせいがんもん)という願文であります。
私たち仏教者は、ことに、坊さんは この誓願をおこし、仏のおしえに背かないように 努力しなければなりません。
平成二十六年の除夜の鐘は、なるべくたくさんの方に突いていただきたいと思い、毎年、午後十一時半から始めるのですが今回は十一時より突き始めました。人間の煩悩は百八つあるとのことから碁石の白いのを五十四個、黒いのを五十四個準備しまして鐘を一つ突くと用意したべつの缶に移す、白いのがなくなると半分終わった。という目安になります。
さて私たちの煩悩はたった百八ぐらいでしょうか? 物欲、お金の欲、色欲、名誉欲、食欲、なかなか「どうして尽きない煩悩であります。一年のさいごの夜、この煩悩を捨てて新しい年を迎えるわけですが百八というのは、たくさん、たくさん、と、とらえてもいいのでないか。こんなわけで碁石がなくなって約半時、御近所の方々についていただきました。
来年もどうか、どなたでも、除夜の鐘をつきにきていただきたいとおもいます。
法門無量誓願学、たくさんの仏の教えを学べますように。
私は昨年暮れに善財童子(ぜんざいどうじ)の由来についての本を入手いたしました。実は黄檗宗のお経の中に在家の方々が必ずや成仏できますようにという善財童子が登場する三宝讃(さんぼうさん)というのがあります。
昔あるインドの大金持ちの息子さん、つまり善財童子が菩薩になる道を求めて善知識(先輩がた)を訪ねて教えを乞う旅に出ます。先輩方の教えを ききながらまた、次の先輩を紹介してもらい、つ いに五十三人の先輩に教えを乞うと、すでにあなたは菩薩と同じ修行ができたのだと、仏から認めていただけた。と、言う物語です。
こうした話が日本でも庶民の文化に影響して、東海道五十三次なんて言うのですね。善財童子は、華厳経(入法界品)に登場する童子なのですが、皆さんも東大寺の宝物の写真などで子供が合掌しながら歩いており、ふと、後ろを振り向いているのをご覧になったことがあるかもしれません。耳の上に髪の毛をカールした(これをみずら) といいますが、とても頬笑ましい像です。
こうして私たちは長い歴史とともに培われてきた仏様の教えを、毎日の生活の中に取り入れて、先輩方の守り通してきた、四つの誓いに少しでも触れながら、やり直しのきかない残りの人生を送りたいものであります。
住職合掌